概要
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直熱三極管のVT-62(801A)を出力段に使用した、シングルアンプです。
基本構成としては、3段増幅、オーバーオールの負帰還なし、VT-62は
トランスでドライブしています。会社の先輩のオーディオ仲間の方から
真空管を頂いたのをきっかけに製作したものです。ローコストを目指した
前作IA-V1とは打って変わって、高級なパーツを採用し、デザイン面にも
力を入れました。
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デザイン案
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元々真空管を頂く前から、高級部品を使用する真空管アンプの計画はあったのですが、
予算の関係からデザインとコンセプトのみの案だけにとどまっていました(ちなみの
その当時はkt-88のプッシュプルを予定していた)。そうしているうちに真空管を頂いたので、
デザインのみそれを基本としてIA-V2計画が具体的にスタートしました。
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パワーポイントによるデザイン検討
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今回はデザインの検討のために、マイクロソフトのパワーポイントを使用しました。
このソフトでデザイン、機構、配線計画等々を色々検討しました。一応完成したアンプは
このデザイン案とほぼ同等の物となりました。デザイン面では直線基調だったものから、
曲線も取り入れた物へと変化しました。
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フロントパネル
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1.全体:リード社のアルミ梨地パネルとタカチのアルミ押し出し材を組み合わせて
フロントパネルを製作しました。A-one社の転写シールを使用してオリジナルの
レタリングを作成し使用しました。
2.銘板:薄いアルミ板に転写シールで製作した名前を貼り付けたものを、
真鍮の割りピンで取り付けてあります。
3.インジケータ:入力ソースの表示に、豆球を使用したインジケータを
製作しました。インジケータの右にあるトグルスイッチによって選択された
入力ソースを表示します。豆球の柔らかな光が、真空管とマッチしていると
思います。
4.サイドウッド:桧の木に天然塗料の柿渋を塗布したサイドウッドを装備しました。
シックな仕上がりが好感触です。
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トップパネル
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上面から見ると真空管が、弧を描いて配置されている事が分かると思います。
トップパネルはデザインと機能(通風)を兼ね備えたパンチングパネルの上に、
真空管の配置と同じ中心の弧でカットした、アルミパネルを取り付けてあります。
ケース底面に固定されたソケットとパンチングパネル、アルミパネルの位置あわせ
に苦心しました。結果的には納得できるレベルの誤差で収まりました。
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リアパネル
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リアパネルにも転写シールを使用してレタリングを入れてあります。出力ターミナル、
RCAジャックも大型で質のよさそうな物を使用しています。また、上面後端には
ハンドルを装備。リアヘビーのこのアンプの持ち運びに貢献しています。
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製作略史
05年08月:真空管を頂く
09月:回路・機構設計
10月:巻き線ボリューム製作
11月:フロントパネル加工
12月:部品購入、配線設計
06年01月:セレクタ回路等設計・作成、ケース加工
02月:メインシャシーが出来た
VT-62のヒータ接触不良に気づく
03月:インジケータの作成
04月:インジケータの作成続き
05月:ケースが完成
06月:内部配線
07月:内部配線、VT-62壊れる
08月:VT-62を購入する
ヒータ回路が原因のハム音に悩まされる
09月:ついに完成
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回路図(増幅部・電源部)
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増幅回路はほとんど工夫のない、無帰還3段増幅構成となっています。高電圧は
怖いので、VT-62アンプにしては低電圧な動作です。それでも過去最高電圧を扱う
製作であり、絶縁には気を使います。電圧が低く大きな出力が取りづらいため、
出力が出来るだけ取れるようにA2級増幅としました。A2級ではグリッド電流が流れる為、
通常トランスドライブかカソードフォロアドライブにするとの事で、TANGOのNC-16を
使用してトランスドライブにしました。理論的には最大出力2.8Wと求まりました。
主電源回路は重量・体積・コストの増大と色々耐えられ無さそうなので、ダイオード整流と、
トランジスタリップルフィルタを採用しました。トランジスタリップルフィルタの要点は、
1.ASO Limitter回路:トランジスタリップルフィルタは、負荷のコンデンサ容量が大きい
場合に破損が多いらしいです。この原因は電源ON時に大容量コンデンサによって、
トランジスタに高いコレクタ-エミッタ間電圧がかかった状態で、大きなコレクタ電流が
流れる事で、トランジスタのASO*1を超過する為だと考えられます。
これを防止するためにトランジスタのコレクタ-エミッタ間に10Wのセメント抵抗と、
ツェナーダイオード4個を直列接続したASO Limitterを装備しました。これにより
ASOオーバーによる破損が防止できる*2と思います。
(*1安全動作領域の事。データシートを参照すると、大抵ASOのグラフが記載されています。
高電圧領域では二次降伏が発生しやすく、流せる電流が大幅に制限されます)
(*2シミュレーションでは安全そうでしたが、保障は出来ません)
2.リップルの低減:大容量電解コンデンサ、トランジスタのダーリントン接続の採用。
3.フルモールドパッケージの使用:2SC3751を使った部分はもっと電流定格が低くても
良いので、Hfeの高い2SC3675等を使用したほうが性能面では良さそうでしたが、高電圧部での
使用のため、絶縁面で安心できるフルモールドパッケージの2SC3751を使用しました。
VT-62用ヒータ電源回路は、DC点火としました。元々はAC点火にしてみたのですが、
テストしたところ、使用に耐えないレベルのハムノイズが発生してしまったためです。
しかしこの結果、平滑コンデンサによる高調波電流の発生のため、トランスの
定格電流をオーバーしてしまうという事が分かりました。出来ればなんとかしたかった
のですが、ほとんどアンプが組み上がった後だったので諦めました。しかも、現在の
DC点火回路でも、ハムノイズはわずかに発生しているため、万全を期すなら根本的な
対策が必要そうです。
真空管のヒータは温度が低い状態では抵抗値が低く、電源オン時に突入電流が
流れます。その突入電流による真空管へのストレス軽減のため、石塚電子の
パワーサーミスタを取り付けました。
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回路図(セレクター部)
セレクター回路は、TD62084を使用して、測定器などに使用されるリードリレーと、
豆球をスイッチするようになっています。普通の中点オフスイッチでこのような
動作をする回路を考えるのに、ちょっと時間がかかりました。電源はメインの
トランスから適当な電圧が給電できなさそうだったので、独立して小型のトランスを
搭載しました。
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巻き線ボリューム
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以前から使用してみたかった、巻き線ボリュームを採用しました。インダクタンスが
大きいらしいので、特性はいまいちな可能性があります。今回巻き線ボリュームを
メインボリュームに採用するには、何個か問題がありました。一応以下の方法で対処
しました。
1.単連しかない:一般に店頭販売されている巻き線ボリュームでは、単連しか
見つかりませんでした。ステレオに対応するには、左右独立にする方法がありますが、
今回はギヤやシャフト等を組み合わせて2連にしました。メカニカルな外観が良い
ですが、サイズの制約や低い工作技術のせいでシャフトのぶれが大きめになって
しまったのが残念です。
2.Bカーブしかない:一般に店頭販売されている巻き線ボリュームには、Bカーブしか
見つかりませんでした。Bカーブは回転角と聴覚音量が比例しないので、音量調節には
向かないです。擬似Aカーブなど、色々な方法をシミュレート?しましたが、結局
余り良い案が考え付かず、増幅回路図にあるように、アッテネータをつけて対応する
事にしました。このアッテネータには微小信号用のフジソクATEスイッチを採用しています。
3.抵抗値が低い:増幅回路図にあるように、直列に抵抗を挿入しました。
ただこの方法では、最大音量が低下します。
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使用パーツ
今回は今までのMZLアンプとは異なり、高級パーツを使用が多くなっています。
1.抵抗:信号系に東京光音のカーボンを全面採用。電源系はKOAの酸化金属皮膜抵抗
がメイン。
2.コンデンサ:初段と2段目のカップリングにはVitamin Qオイルペーパーコンデンサ、
初段と2段目のカソードバイパスには松尾電機の金属ケースタンタルコンデンサ、
平滑部とトランジスタリップルフィルタ部にはJJのコンデンサ、その他は主に
uniconのチューブラコンデンサを使用しました
3.トランス:トランスは全てアイエスオーTANGO。電源はオリエントコアのMS-160、
出力はM-757、段間はNC-16です。
4.配線材:配線は安全性を重視して600V耐圧のUL1015を使用。
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内部写真(増幅部)
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ケース前部には、増幅回路関係を配置してあります。配線はほぼ納得できる
仕上がりになったと思います。
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内部写真(電源・セレクター部)
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ケース後部には電源回路と、セレクター回路を配置してあります。
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内部コンストラクション
このケースの基本となっているのは通称弁当箱ケースと呼ばれる?アルミ無塗装
のケースです。それを通常とは上下逆にして使用しています。これによって調整時の
増幅回路へのアクセスが容易になっています。また、重量物であるトランス類は
スペーサーを使用してケース底面に固定する事によって、ケース全体の強度のアップを
狙っています。特に重い主電源トランスに関しては、4本全ての取り付けネジを
ケース底面と接続した上、後ろの2本は足と直結してあります。
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