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真空管アンプ MZL IA-V1 〜コストを抑えた真空管アンプ〜


コンセプト

  真空管アンプを一度くらいは体験したいと思い作って見ることにしました。 せっかくなので半導体は使用しないということを第一目標にしました。

 又一般的に真空管アンプはコストがかさみますが、出来る限りお金をかけたく なかったので出来るだけローコストにすることを第二の目標としました。 当初の目標は\12000でしたが後に\14000としました。

 最後に最低限の安全性を持つことも目標にします。

増幅回路

 まず増幅段はシンプルな二段増幅とします。複合管を使うことで増幅に必要な真空管を 左右それぞれ一本ずつにすることが出来てシンプルになります。出力段はシングルと プッシュプルの2種類がありますがコスト面でシングル。

 又出力トランスを使わないOTLというのがありますがかなり面倒そうなので却下します。 出力トランスは安価な東栄変成器製T-850を使用することにしました。

 増幅用の真空管はいくつか検討(主にコスト)したところ、電圧増幅用と電力増幅用の 三極管が封入されたテレビ球の6EM7が良さそうだとなり、これを使用することにしました。

 ネットで検索すると6EM7シングルの作例が豊富に見つかるのでかなり助かりました。 今回は初の作成ということもあり、差動プッシュプルで有名なぺるけ氏の設計例を 参考にさせていただきました。

電源回路

 電源はトランスレスはコストダウンにかなり有効ですが、安全性の観点から却下しました。 トランスは電流容量を考慮しノグチトランスのPMC-100Mを採用しました。 整流には半導体が使えないのでほぼ必然的に整流管の使用になります。お安い5Y3GTに決定。

 リプルの除去方法はチョークコイル、トランジスタリプルフィルタ等が一般的ですが チョークコイルはコストがかかり、トランジスタは無論半導体です。(こうしてみると 半導体使用の合理性がわかります)

 よって今回はホウロウ抵抗を使ってRC平滑回路を組むこととしました。RC平滑回路では 抵抗での電力損失が大きくなりがちなので、抵抗の許容損失に注意します。

機構設計

 小出力であまり大型の部品も無いのでコンパクトにいきたいと思います。 横長のデザインはあまり好みではないので、奥行きが長いデザインにしました。 しかし電源トランスが重いので重量バランスが余りよくないです。

 特にシャシーの前方内部に配置した出力トランスやラグ板、真空管ソケット等が 密集していて結構ぎりぎりでしたが、一応収めることが出来ました。

 電源フィルタ用ホウロウ抵抗は電力容量20Wに対して3Wとかなり余裕を 持たせていますが、シャシ内の温度上昇低減と見た目が好みなので 上面に配置しました。端子には熱収縮チューブをかぶせ、絶縁をします。


製作

 8月19,24,27日:部品購入

 秋葉原にて部品を購入しました。トランスはノグチトランスと東栄変成器 真空管はクラシックコンポーネンツとアムトランス。CR類は鈴商、マルツ等。 機構関係は秋月、奥澤、マルツ等で購入しました。


 8月30,31日:金属加工

 加工寸法を書いた型紙を載せドリルで穴を開けます。
一応部品を乗せて確認してから行うと安心です。

 大きな穴はハンドニブラ、糸鋸、ヤスリなどを使用して
仕上げます。結構手間のかかる作業です。

 シャシーが完成しました。私にしては早い仕上がりです。ただスイッチ穴が大きすぎた。



 9月01,04日:配線

 配線作業を行います。部品が少ないので早く済むかと思ったのですが、 それなりに丁寧にやったのと皮膜をむいたりするので結構かかりました。

 この日になって秋月で買った電源スイッチが通常と逆の動作だと気づきましたが、 もう変えるのも一苦労なので(穴の再加工も必要?)あきらめることにしました。


さて電源をいれてみます。
1回目:もくもく〜〜 抵抗からけむりが出ている。
原因は抵抗のW数を調べていなかったからでした。適当だな・・・。

2回目:抵抗を交換し電圧チェック。かなりの誤差です。
原因は自分で作った実体配線図のミスでした、情けない。

3回目:配線修正。電圧は高めだがぎりぎり問題ない。CDPの出力を入力してみると 音も出ています。しかし低音が薄いので小型のトランスではこの程度なのか。 と思いました。が、実際は位相が左右で逆になっていたためでした。

4回目:配線修正。ちゃんと音が出る。かなりローコストで作ったことや先入観で 真空管だからLo-Fiだろうと思いましたが私の耳ではトランジスタアンプと 全然違いがわかりませんでした。心配したハムもスピーカーに耳を近づけても 全くわからない程度で安心しました。

仕上げ

 9月18日:仕上げ

 電源電圧がちょっと高すぎて損失が大きいのでトランスのタップを200Vに 下げました。多少予定の値からは低くなってしまいましたが、問題ない範囲です。 しかしこのアンプ、小型のシャシーのせいか結構発熱が多いです。 簡易的に測ったところシャシー表面温度は約60度でした。

 このタイプのシャシーは底板が無く高圧を扱っていることも考えると 安全性が少し低い気がします。今回は自己消火性を持つ塩ビの板を タッピングネジを使って固定しました。スケルトンでかっこいい?

 最終的な内部の写真が左のです。うまいこと収まりました。 部品購入から1ヶ月で完成とかなり短時間でいきました。

コスト

 今回の大きな目標であったコストがどうなったかというと左図のようになります。 目標の\14000をちょっと上回ってしまいました。多少うちにあった部品も使ったので すべて新規に買うともう少しかかりますが、\15000には収まると思います。

 色々部品をケチったりしているので相対的にトランスの値段の比率が大きいですが、 電力を多く消費しがちな真空管アンプの電源をまかなうにはやはりある程度 容量大きなトランスがどうしても必要になるわけです。

 割とお金のかかりがちな機構関係はもっともベーシックな部品ばかり使用したので、 かなり低い割合となっています。また、お金のかかりそうな真空管の比率は それほど高くはありません。

 まとめとしてこのコストで趣味性の高い真空管アンプを満足のいくクオリティー で作れたので満足しています。

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